賃上げか?企業型確定拠出年金の導入か?従業員はどっちがうれしい?

賃上げか?企業型確定拠出年金の導入か?従業員はどっちがうれしい?
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 大企業は賃上げですね。福井のような地方ですと、いわゆる大企業は少ないものですから、全国ニュースで報じられるような賃上げ情報から少々距離があるように思います。それでも人材確保、定着のためにも賃上げは必要になってくるように感じます。

 そんな情報を見ていると、賃上げ一択なのか?と疑問に思います。中小企業、零細企業には賃上げ以上の効果が期待できる仕組みがあるとしたら、それは「企業型確定拠出年金」です。

 業績が上昇、インフレ傾向、従業員の定着など、要因はいろいろある中での、従業員への還元を賃上げとするかどうか悩みどころです。

 「賃上げ」と「企業型確定拠出年金」を比較検討してみたいと思います。

1万円の給与アップ

 給与が1万円上がると、うれしいですね。しかも、わかりやすくうれしいですね笑。ただ、手取りで1万円上がるかというと、そうではないですよね。

 1万円に対して、社会保険料、所得税、住民税がかかります。居住地、年収によって税率は変わりますが、20~30%程度は差し引かれそうです。ここでは細かい税金の計算はしませんが、給与が1万円上がったからと言って、そのまま1万円分の手取りが増えないことは理解できます。

 会社としては、給与を1万円アップするのですが、従業員にとっては1万円の価値はないということになります。さみしい限りです。

 しかも、その効果は一時的と言えます。給与アップも1年もしないうちに普通になり、満足感は薄れることが容易に想像できます。

企業型確定拠出年金に1万円

 給与はそのままで、企業型確定拠出年金制度を導入し、従業員の掛け金1万円を負担する場合はいかがでしょう。

 企業型確定拠出年金ですから、その掛け金で投資商品を購入します。預金や保険などの元本保証型、または投資信託などの元本変動型の商品から投資先を選択します。投資性の商品を選択すると1万円以上の価値を生み出す可能性があります。

 給与の代わりの掛け金は、従業員自身が負担していることはなく会社負担としますから、積極的にリスクを取ることもできます。リスクを取るということはリターンの期待ができるということです。

企業型確定拠出年金の副産物

 企業型確定拠出年金制度を導入すると、従業員は投資機会を得ます。そして会社は、従業員に対して継続的に投資教育の機会を提供する努力義務があります。

 従業員はこの機会に、金融リテラシーが高くなります。すると、家計の安定につながります。家計が安定すると金銭的な悩みがなくなる、もしくは小さくなります。仕事に集中できる環境が整うのではないでしょうか。

 リアルで投資を体験すると、いろいろと理解が進みます。投資詐欺には引っ掛かりにくくなります。リアルな投資現場を知ることで、とある事象に遭遇した時に詐欺かどうか、怪しいかどうか、気が付く可能性が高くなります。

まだある副産物

 企業型確定拠出年金は、大企業の導入が進み、広がりを見せています。これから地方の企業、中小企業などに拡大していくと思われます。

 また、地方移住も進むと思われます。私はファイナンシャルプランナーとして、福井県の移住相談員もさせていただいておりますが、毎回多くの人から相談の申し込みがあります。福井に来るかどうかはともかく、地方移住に興味のある人は増加傾向にあると感じます。

 都市部の大手企業勤務の家族が地方へ移住しようと検討するポイントは、住まいと仕事です。大手企業から地方企業への転職先を探しているときに、企業型確定拠出年金制度が導入されているかどうかが最後に決め手になるかもしれません。優秀な人材が企業型確定拠出年金があるからという理由で転職先に選ぶ可能性は大いにあると思います。

費用面に差はあるか

 給与アップと企業型確定拠出年金への拠出、同じ1万円を毎月支払う時の会社の費用負担はどのようになるでしょうか。

給与アップの場合

 給与を1万円アップすると、社会保険料の負担が増えます。労使折半ですから、従業員が社会保険料として差し引かれるのと同額を会社が負担します。1万円の給与アップは、それ以上に費用負担があります。

 1万円以上支払って、1万円の給与アップになり、1万円以下の手取りが増えるという状態になります。なんとも言い難いですね。

企業型確定拠出年金の場合

 掛け金1万円は額面通り従業員に届きますが、制度運営にランニングコストはかかります。制度加入人数により金額は異なりますが、毎月一定額の負担があります。導入時の一時金の負担もあります。

 継続的な投資教育をしていこうと考えると、その費用負担も出てきます。そろそろ投資教育しないとな、という企画をする手間もあります。

 コストをどう考えるかで制度導入を採用する決め手になりそうです。

どちらにしようかな?

 給与アップか企業型確定拠出年金の導入か、どちらが御社にとってふさわしいでしょうか。従業員のメリットはどちらが大きいでしょうか。

 それぞれのメリット、デメリットはあると思いますから、しっかり検討していただきたいと思います。顧問税理士、顧問社労士、金融機関などに相談できるといいなと思いますが、企業型確定拠出年金について詳しいかどうかは不明です。

 私としては、給与アップは一時的な効果であり、企業型確定拠出年金は長期的な効果が期待できると考えています。できれば給与アップ、企業型確定拠出年金制度導入の両方採用がいいのかもしれませんが、ライフスタイルプラスに、もしどちらか一方という相談があったとしたら、企業型確定拠出年金の導入をお勧めします。

まとめ

 いかがでしたでしょうか

 従業員のために給与アップも素晴らしい取り組みですし、従業員も喜びます。給与が増えるのは大歓迎です。ただ、すぐにそれが普通の状態になることも想像できます。私も会社員経験がありますから実感としてわかります。

 企業型確定拠出年金は、急に言われても驚くかもしれません。投資経験がない人は心配が先に来るかもしれません。これからの時代、投資は避けて通れないと考えていますので、その契機を作る意味合いもあると思います。

 給与アップするなら10%は上げてほしいな~笑。

 

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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