誰もが直面する現実。 相続と空き家問題、あなたはどう乗り越える?

誰もが直面する現実。 相続と空き家問題、あなたはどう乗り越える?
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 老親の介護、そして相続。誰もが避けて通れない現実が、そこにあります。特に、都市部から離れた実家の空き家問題を抱える方は少なくないはず。固定資産税の負担や、倒壊の危険性など、問題は山積しています。

 この問題に、あなたはどう向き合いますか? 本記事では、相続と空き家問題の現状、そして具体的な解決策を分かりやすく解説します。

実家の空き家問題とは

少子高齢化と空き家問題の現状

 少子高齢化が進む日本では、空き家の増加が深刻な社会問題となっています。人口減少や都市部への人口集中により、地方や郊外にある実家が空き家化するケースが増加しています。総務省の統計によれば、住宅総数のうち空き家は約900万戸と過去最大、空き家率は約14%に達しており、今後も増加が予想されます。

 特に親世代が高齢化し、認知症や病気で住むことが困難になり施設への入居が決まると、実家は空き家の状態となり維持や管理が家族に重い負担となります。相続が発生しても、実家に住む予定がなければ売却や賃貸の選択肢が浮上しますが、手続きが煩雑で放置されるケースも少なくありません。この空き家問題は、地域の防犯や景観の悪化にも繋がり、全国的な課題として解決が急務です。

相続により発生する空き家の増加

 相続によって発生する空き家の増加は、少子高齢化が進む日本で特に顕著な問題となっています。親が亡くなった際に相続人が実家を受け継ぐものの、住む予定がなければその家は空き家になってしまうことが多くあります。

 相続人が都市部で生活している場合、実家に戻ることが難しく、空き家の管理や維持費が負担となります。その結果、相続を機に空き家が増え続け、管理不全の状態が長期間続くことが問題視されています。空き家は防犯面や景観の悪化につながることに加えて、地域社会の活力低下にも繋がり、個人の課題を超える大きな社会問題になっています。

認知症が空き家・相続に与える影響

認知症と財産管理のリスク

 認知症の発症は、高齢者にとって大きなリスクとなり、財産管理にも重大な影響を与えます。認知症が進行すると、財産の適切な管理や意思決定が困難になり、預貯金の引き出しや不動産の売買が制限されることがあります。

 また、相続手続きが発生しても、本人の判断能力の低下により意思表示できない場合は、遺産分割協議や不動産売却が進められず、家族が対応に困るケースが少なくありません。このような状況に対処するため、事前対策としての家族信託、事後対応としての成年後見制度があります。早めの準備を行うことで、認知症による財産凍結やトラブルを回避し、家族がスムーズに財産を管理できるようサポートすることが可能となります

認知症による相続手続きの複雑化

 認知症による相続手続きの複雑化は、家族にとって大きな負担となる場合があります。例えば、父親が亡くなり、母親と子供たちが相続人となる場合を考えてみましょう。もし母親が認知症を患っていると、遺産分割協議や不動産の売却が難航する可能性があります。母親が財産を相続する立場でありながら、認知症により意思表示ができないため、遺産分割協議書に署名することができないのです。

 この場合、成年後見制度を利用して後見人を選任しなければならず、そのためには家庭裁判所での手続きが必要となります。しかし、後見人が選ばれても、その後の財産管理は裁判所の監督下で行われ、自由に財産の処分ができなくなります。また、不動産の売却や賃貸も裁判所の許可が必要で、迅速な対応が難しくなることが多いです。それでも手続きを進めることはできるようになりますが、家族の思いが反映されない可能性が高まります。

 このような認知症による相続手続きの複雑化を避けるためには、家族信託などの事前対策が有効で、元気なうちに財産管理を家族に任せる準備を進めておくことが重要です。

空き家を相続した場合の3つの選択肢

実家に住む

 実家に住む選択肢は、親からの思い出を引き継ぎ、家族で新たな生活を始めることができる点が魅力です。しかし、建物が古い場合はリフォームが必要になることや、生活環境が現在の居住地と異なるため、通勤や子どもの学校なども考慮する必要があります。また、固定資産税や維持費も発生するため、総合的なコストの見積もりが重要です。

 子どもの学校環境や生活環境、広い庭が気に入り、実家に住むことを決断することもあると思います。リモートワークが普及し、通勤の必要が減ったことで移住が可能となるかもしれません。家族でゆったりとした生活ができる環境を手に入れ、子どもたちも自然に囲まれた環境で育てることができるようになり、古い家をリフォームする費用がかかったとして、結果的には家族にとって最良の選択肢となるかもしれません。

売却する

 売却は、空き家の維持管理にかかるコストや手間を回避し、資産を現金化することができます。地方や需要の少ない地域では売却が難しい場合もありますが、適正な価格で売却できれば相続後の負担を軽減できます。ただし、売却には不動産市場の状況にも左右されるため、早めの相談と準備が必要です。

 都市部に住んでおり、実家に戻る予定がなかったため、維持費や管理が負担になることを避けるために売却を選択することもあります。実家は郊外にあり、需要が低かったものの、地元の不動産会社に相談し、市場調査や適正価格の査定を受け、売却価格は当初の期待を少し下回ったとしても売却することで維持費がかからなくなり、最終的には家計にとってプラスになる可能性があります。

賃貸に出す

 賃貸に出す選択肢は、空き家をそのままにせず、家賃収入を得ながら物件を活用する方法です。管理は不動産会社に委託できるため、比較的手間が少なく、防犯や維持管理の問題も軽減されます。ただし、賃貸借契約が長期化すると、後に売却や自己使用を考える際に制限が生じることもあります。

 実家の地方や地域によっては、あまり家賃収入を見込めない場合もあります。収入にならなくとも、例えば固定資産税など維持管理費だけ負担できる程度の賃料を設定するケースもあります。実家の所有者は赤字を回避することで継続的に保有できますし、借りる側は比較的低い賃料となり、民泊、カフェなどチャレンジショップのようなこともできるようになります。

早めの対策が鍵となる

親が健在なうちにできること

 親が元気なうちに、相続や家族信託について考えておくことは、ご家族の未来のためにとても大切なことです。遺言書の作成や財産目録の作成は、相続トラブルを防ぐ第一歩です。

 このような相続に関することは、家族会議の開催が重要ポイントです。親だけで考えることが家族のためにならないかもしれませんし、子世代で考えることが親のためになるとも限りません。基本的には親の思いを反映する相続対策が家族にとってふさわしいと考えています。親の思いに対して子世代で相談できること、準備できることがあると思います。

 家族だけで相談すると感情がぶつかることが予想されることもあり、家族会議に第三者が入ることで冷静に話し合いができると考えています。これまでも、家計相談、相続相談などで家族会議に第三者である私が入ることで、お互いに意見が言いやすくなり、理解が進むという場面を、何度も経験しています。「そんなこと考えていたの?早く言ってよ~」などと前向きな驚きもありました。そういう意味で、知見のあるファイナンシャルプランナーや専門家が相談に入ることをお勧めします。

家族信託などの対策が重要

 家族信託は、親が元気なうちに、信頼できる人に財産管理を委託する制度です。認知症など、将来、親が判断能力が低下する可能性がある場合、家族信託を活用することで、以下のメリットが期待できます。

財産の凍結を防ぐ

認知症のことが金融機関に知られることになると、預金口座が凍結される可能性があります。家族信託を利用し、事前に委託することで、凍結を回避することができます。

「争族」を防ぐ

相続発生前に家族で相談しておくことで、スムーズに相続手続きが進みます。事前の家族会議が必須であり重要です。

高額になる後見人費用を削減

家族信託をしていない場合、認知症発症後は成年後見制度を利用することになります。後見人費用は毎月2~6万円程度必要になります。途中停止ができず期間限定ではないため費用は継続的に必要となります。家族信託は導入時に費用が発生しますが、継続的な費用はとくにありません。

柔軟な財産管理

信託契約の内容は自由度が高く設定することができます。親の思い、家族の状況などに合わせて柔軟に対応できます。遺言書を超える設定も有効にできるため、親の思いを反映しやすくなります。

まとめ:空き家問題と相続で悩む方へのアドバイス

ひと言でまとめるとしたら、「早めの話し合いと専門家への相談がトラブル回避のカギ」です。

 相続や空き家問題など、家族の未来を左右する大きな決断を迫られる場面は、誰しもが経験する可能性があります。これらの問題は、早めの対策が非常に重要です。

 親が元気なうちに、家族で集まり、それぞれの思いや考えを共有することが大切です。相続に関する知識を深め、家族信託などの制度についても検討してみましょう。

 しかし、相続や不動産に関する法律は複雑で、一人で抱え込まず、弁護士や司法書士などの専門家へ相談することを強くおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、より適切な解決策を見つけ出し、トラブルを未然に防ぐことができます。そして、福井には「福井県家族信託協会」もあります。相続について幅広く相談することもできます。FP、IFA、不動産、司法書士、税理士がメンバーで在籍しています。オンライン相談にも対応しております。

 大切なのは、問題を先延ばしにせず、早いうちに行動することです。専門家の力を借りながら、家族みんなで話し合い、最善の決断を下しましょう。

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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