なぜ人は変われないのか?お金の決断を邪魔する「現状維持バイアス」とは

なぜ人は変われないのか?お金の決断を邪魔する「現状維持バイアス」とは
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「NISA、気にはなっているけど…結局まだ何もしていない。」そんなふうに思っている方、多いのではないでしょうか。

 2024年から制度が大幅に拡充された新NISA(少額投資非課税制度)は、長期的な資産形成の大きな味方です。運用益非課税のメリットや、国が推奨する資産形成の仕組みとして注目されています。

しかし実際には、「気にはなるけど行動に移せない」という方が少なくありません。

 この「動けない理由」の背景にあるのが、「現状維持バイアス」と呼ばれる心理です。今回は、このバイアスが私たちのお金の選択にどんな影響を与えているのか、そしてどうすればその壁を乗り越えられるのかを、一緒に考えてみましょう。

現状維持バイアスとは?

 現状維持バイアスとは、「今の状態を変えたくない」「変えるのが不安」という心理的傾向を指します。人間は本能的にリスクを避けようとします。たとえ現状に多少の不満があっても、それを変えることで何が起こるかわからない不確実性に対して、強い抵抗を感じます。

 これは心理学的にもよく知られた現象で、行動経済学の分野でも多く研究されています。とくにお金に関する判断はリスクが伴うため、現状維持バイアスが強く働きやすい分野です。

NISAに踏み出せない「よくある3つの例」

 では、実際に現状維持バイアスが投資判断にどのように影響しているか、具体的な事例を見てみましょう。

①「NISA口座を作ったけど、まだ買ってない」

 これは非常に多いケースです。口座開設まではなんとかできたけれど、いざ何を買うかを決めようとすると、

  • 「今買って損したらどうしよう」
  • 「相場が下がってるらしいから、もう少し待ったほうがいいかも」

という不安が湧いてきて、結局そのまま数か月、あるいは1年、2年と過ぎてしまう。

 実はこれ、まさに現状維持バイアスの影響です。変化(=投資)を避け、安心感のある現状(=預金や未投資)を選んでしまうのです。

②「相場が悪いから、今は動かない方がいい?」

 2025年4月現在、トランプ大統領の動向から各国の経済において不透明感を増しています。株式市場も一時期のような右肩上がりではなく、影響が出ています。

そんなニュースを聞くと、「今は投資すべきじゃない」「時期が悪い」と思ってしまいがちです。

 しかし、投資の基本は「安く買って高く売る」ことです。相場が低迷している時期こそ、長期で見ればお得な買い場とも言えます。今始めることで、将来の資産形成に有利なスタートを切れる可能性があります。

 つみたて投資の場合は、「安いときはたくさん買う、高いときは少し買う」となりますから、今始めるとしたら「積み立て」が良いかもですね。

③「よく分からないから、やめておこう」

 NISAは制度が複雑に見える部分もあり、「つみたて投資枠」「成長投資枠」などの用語を前に足が止まってしまう人も多いです。分かったような分からないような、微妙な感じかもしれません。

 情報が多すぎて「選べない」→「動けない」→「現状維持」というループにハマってしまうのです。

 誰もが経済評論家や経済アナリストのような知識を持たなくても大丈夫です。ただ、まったく知らないまま、見つけた情報に飛びつくのは心配です。

現状維持の見えないリスク

 ここで重要なのは、「何もしない=安全」ではない、ということです。

 例えば、100万円を10年間、銀行預金に預けていても、利息はほとんどつきません。一方で、インフレが進めば、同じ100万円で買える物やサービスの量は減っていきます。年2%のインフレは、100万円のものが翌年102万円出さないと購入できないということです。インフレは現金の価値が下がることです。

 つまり、現状維持に見える行動が、実は“資産価値の目減り”というリスクを背負っているのです。

 また、若いうちに投資を始めたほうが「時間」という最大の味方を得られるという点も見逃せません。投資における複利の効果は、始める時期が早ければ早いほど大きくなります。時間を味方につけるという言葉もあります。これは、投資の世界では常識のように言われています。

現状維持バイアスに打ち勝つ方法

① 小さな一歩を踏み出す

 すべてを一気に変えようとすると、脳が抵抗を感じてしまいます。大切なのは、「最初の一歩をとにかく小さくする」ことです。大きく始める必要はありません。

例えば
✅ 1,000円だけ投資を始めてみる
✅ NISA口座で1銘柄だけ買ってみる
✅ 投資信託を 月500円の積み立て購入の設定してみる

実際にやってみると、「意外と簡単だった」と思えるものです。

② 第三者の視点を取り入れる

 自分ひとりで判断すると、どうしても感情や思い込みに左右されがちです。そんなときに役立つのが、FP(ファイナンシャルプランナー)や資産形成に詳しい人のアドバイスです。

 冷静な視点で自分の状況を見直してもらうことで、「本当はどうしたいのか」に気づきやすくなります。リスクの取り方に対しての考え方がまとまるように思います。

③ 未来を数字で見える化する

 未来の不安は、「見えないから」不安なのです。でも、ライフプランやキャッシュフロー表を作って、数字でシミュレーションしてみると…

  • 「このままだと老後資金が足りない」
  • 「毎月10,000円の投資で改善できるかも」

そんな気づきが得られ、「変わる理由」が明確になります。

まとめ:変わらないリスクより、変わる勇気を

 現状維持バイアスは、誰にでも自然に備わっている心理です。
それを悪者にする必要はありませんが、「それに気づく」ことができれば、行動を選べるようになります。

2025年は、世界経済の転換期になるかもしれません。相場が不安定な今こそ、自分の資産形成に向き合う良いタイミングです。

「今はまだ早い」ではなく、「今だからこそ、はじめてみる」そう思えるきっかけになればうれしく思います。

誰かに相談してみたいと思った人は、ライフスタイルプラスにお声掛けください。

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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