退職金の賢い選択は?一括返済か、資産運用か

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 退職金は大きな収入となります。退職一時金制度、企業型DCなど、制度はいくつかありますが、まとまった資金を受け取ることになります。

 大きな資金であるがために、その使い道次第で老後生活の質が変わる可能性が高いため、慎重に判断したいところです。「住宅ローンの一括返済」と「資産運用」のどちらを選択する場面はあり得るケースです。

 住宅ローンを一括返済すると、毎月の負担が減少し、心理的な安心を感じることができます。一方で資産運用を選択すると退職金を増やす可能性があるものの、運用リスクが伴うため、気に掛ける心理的な負担を感じるかもしれません。また、計画的に管理することが求められます。

 今回は、この2つの選択肢についてメリット、デメリットを紹介しながら、どう選択するのかを解説していきます。ヒントになればいいなと思います。

住宅ローン一括返済を選んだら・・・

 退職金で住宅ローンの残債を一括返済することは、使い道としては割とよくある話だと思います。一括返済のメリット、デメリットを見てみましょう。

一括返済のメリット

 一括返済で住宅ローン残債を清算するメリットは、毎月の返済負担がなくなることです。退職後の年金等の収入から、ローンの残り期間の5年、10年と毎月返済する負担は相当大きくなることが想像できます。

 一括返済することで固定費である住居費の負担がなくなることは、心理的にも大きな安心感を得ることができます。老後の家計がスリム化でき、節約など我慢することが少なくなります。固定費を減らすことは、赤字になるストレスを無くすことに直結します。

一括返済のデメリット

 一括返済でデメリットと感じるのは、手元資金が大きく減少することです。他の資産などにもよりますが、現金資産が無くなる不安感はあると思います。現役時代より収入は制限されますし、この先貯蓄が大きく増加することも考えにくいからです。また、現状の低金利において、住宅ローンの借入金利が資産運用で得られる利率より低いケースもあり、一括返済が最適な選択になるのか検討が必要です。

このパートをまとめますと、一括返済は「リスクを抑えて安定性を重視する」という選択となります。

資産運用を選んだら・・・

資産運用のメリット

 資産運用のメリットは、年利3%、5%というリターンにより資産を増やす可能性があることです。住宅ローン金利を上回る利率で運用できる可能性があるという点です。しっかりと分散投資をすることでリスクを抑えながらリターンを求めるポートフォリオ(投資商品の組み合わせ)を作ることができます。

 運用の成果が出ると、退職後の生活に余裕が生まれます。予定外の出費にも対応ができるようになるのも魅力です。

資産運用のデメリット

 資産運用のデメリットは、当然、資金を減らす可能性があることです。リターンとリスクは表と裏、もしくは一体ですから、資産がマイナスになる可能性はあります。退職金以外の資産も含めて考えて、どの程度の割合の資産を運用に回すかを検討する必要があります。動画サイトやネット上にある投資の情報は、運用がうまくいく話が多いように感じますが、それを鵜呑みにせず考えることが重要です。元本保証ではありませんから。

このパートをまとめると、資産運用は「リスクをとりつつ資産を増加させる」もしくは「リスクをとりつつ資産の減少ペースを緩やかにする」を重要視する選択になります。

退職金をどう配分するか?

 住宅ローンの一括返済、資産運用のメリット、デメリットを確認しました。「でしょうね」という感じですよね、想像できます。

 それを踏まえまして、重要なポイントは「どう配分するか」です。どういう手順で考えていくのかを解説していきます。3つのステップで考えてみましょう。

STEP1
ライフプランの作成

老後の生活に必要な資金を考えます。これからどのようなことがありますか?住宅のリフォーム、旅行、自動車の買い替え、介護費用など、ライフイベントにかかる費用を見積もっておきます。日々の生活費も把握できるとスムーズです。

STEP2
キャッシュフロー表の作成

 次は、退職後の収支バランスを視覚化するキャッシュフロー表を作成することで、老後破綻するのか、100歳まで足りるのか「見える化」します。どの程度の資金があれば足りるのかを具体的に理解することができます。

STEP3
優先順位を決める

住宅ローンの残債、保有資産、リスク許容度、必要な資金などを考慮して、退職金の使い道を選択、配分を決めていきます。まさしく、ケースバイケース、個別案件となりますので、どうするのが有効なのか考えます。キャッシュフロー表を作成したら、「一括返済するケース」「資産運用するケース」など、いくつかのケースを作成すると考えやすくなります。

どう配分するか

 複数のケースのキャッシュフロー表を見ながら、どのケースでいこうかな、どういう配分にしようかなと考えて決めていきます。

 ここからが本番です。3ステップで「見える化」できた老後プランから、どれを採用するか具体的に考えていきます。返済か運用か、感情と合理性、希望と現実、さまざまな視点から考えることになります。

 そこにFPの客観的な視点が入ることで、納得感のある選択ができると思います。私としては、住宅ローンの返済をするにしても、どれだけの資金を運用に回すことができるかのバランスを相談することになります。

資産運用の活用方法

 資産運用をする場合は、どれだけリスクを取れるか?がポイントです。退職金だけでなく、他の保有資産も含めて検討していきます。「退職金が2000万円あるのでしたら、半分は手元に残して半分の1000万円をこの投資信託に・・・」という、根拠のない営業はスルーしてくださいね(笑)

 退職金の資産運用の考え方には、3つのコースがあります。

 例えば2000万円の退職金の使い道として、老後の生活費の補填で毎年100万円を取り崩していくとします。何もせずに取り崩していくと2000万円は20年で「ゼロ」になります。60歳から取り崩し始めると80歳で、65歳からだと85歳で使い切るという計算です。これでOKという人は、リスクを取らずにこのままで良いと思います。ただ、毎年残金が減っていくことに精神的に耐えられるのかという不安があります。

 そこで、3つのコースを紹介します。①リスク抑えめ安心コース、②リスクそこそこ維持コース、③リスク取って成長コースとなります。それでは、ひとつづつ紹介していきます。※税金は計算に入っていません。イメージで捉えてください。

リスク抑えめ安心コース

2000万円を20年より長持ちさせることを目的とするコースです。

年率3%運用で、30年まで資産寿命が延命されます。つまり、100万円を30年間取り崩すことになるので、2000万円の元金を3000万円として使うことができる計算です。

年率3%~4%を狙っていくとしたら、リスク抑えめで債券投資を中心に考えます。債権の投資信託でもOKですね。

基本的に放置プレイ投資で大丈夫です。

リスクそこそこ維持コース

2000万円をできる限りキープすることを目的とするコースです。

年率5%運用で、毎年100万円の運用益が出ますので、そのまま取り崩しても2000万円が残るという計算です。

「そんなにうまいこといかんやろ~」と思いますか?まあ、思いますね(笑)
ただ、年率5%の運用ができる投資信託は珍しくありません。単年で見ると、年率10%プラスの年もあれば3%プラスの年もあり、またマイナスになる年も存在する可能性もありますが、振り返ってみると平均で年率5%で運用ができていることはあります。

アメリカ、先進国などの株式の投資信託で検討できます。頻繁にチェックしなくとも大丈夫です。

リスク取って成長コース

リスクを取りリターンを求め、資産を増大させることを目的とするコースです。

毎年取り崩す100万円以上の運用益を出すように年率10%運用を目指します。リターンを取りにいくことはリスクも一緒に抱えることです。ハイリスクハイリターンと言われる投資です。

年率10%運用で200万円が運用益となります。100万円を取り崩しても100万円残るという状況です。理想的です。目指したい。

少々尖ったといいますか、投資対象を絞った投資信託が向いています。たとえば、半導体企業への投資、インド、東南アジアへの投資などになります。

毎日とは言いませんが、ちょこちょこ様子を見るといいと思います。経済ニュースは気にかけた方が良いです。

 投資をしようと証券会社のサイト見ていると、うまくいくような気がしてきます。だとしても、理解していただきたいのは、「右手にリターン、左手にリスク」という状況だということです。ローリスク・ハイリターンは「無い」と思ってください。リスクとリターンは一緒に、同時に持っています。

 資産運用を検討する中で注意をしていただきたいのが、簡単に儲かる話、ノーリスクハイリターン商品、無資格者の金融商品販売セミナーなどです。

FP福田の考えは・・・

 FP福田としては、「条件付きで住宅ローン一括返済」です。

条件とは、①その他の資産状況 ②退職金の額 ③住宅ローンの残債額 このバランスがどうなってるかによります。住宅ローンの清算をまずは検討します。

 住宅は「賃貸か購入か」という論争があります。資産価値とは別で、住宅ローンの考え方に「一生涯の家賃を前払いすること」があると思っています。賃貸物件で80歳、90歳になっても家賃を払うより、住宅ローンを組んで購入し、65歳、70歳までに一生涯の家賃を払いきってしまうという考え方です。これは「アリ」ですし、住宅を購入する目的のひとつでもあると考えます。

 その次の段階で、資産運用でOKと思います。

 条件のバランスを客観的な視点で考えることができるファイナンシャルプランナーに相談できるとスムーズに決めることができると思います。ひとり推薦するとしたら誰でしょうかね~、私でしょうね(笑)ライフプラン相談と資産運用の相談が同時にできる方が便利だと思うんですよね。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?一括返済は精神的な余裕が生まれる、固定費の支出が一つ無くなるという安心感は大きいです。「借金が無い」ことは精神衛生上、大歓迎です。私も借金が無い生活を目指したい。 

 それでも、資産運用は必須と思います。資産寿命を延命することも重要ポイントです。

 退職金の使い道としては、「住宅ローンの返済を優先させて、資産運用にも資金の一部を回す」が正解のひとつになると考えます。

 情報はあふれています。あなたに合うのはどれか見極めましょう。そして、どうすればいいのか分からなくなったり、迷いが生じた場合は、リアル面談で相談したいときはお近くのFPをお探しください。オンライン相談でOKでしたら、FP福田にお声掛けください。

 

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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