老老介護からつながる老老相続の問題点は?安心する解決策とは?

老老介護からつながる老老相続の問題点は?安心する解決策とは?
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老老介護が増えている現状

 日本では、医療技術の進歩や健康志向もあり、平均寿命が延びており高齢者が増えています。これに伴い、避けて通れないのが「老老介護」の問題です。高齢者である自分がもっと高齢の親の介護をする 、または夫婦ともに長生きをし、お互いに介護をすることもあります。

 2022年の厚生労働省のデータを見ると、高齢者世帯は1,693万1千世帯で全世帯の31.2%となっており、世帯数、割合とも過去最高になっています。

 介護をする人、介護してもらう人がいますが、同居で要介護者がいる世帯でデータを見ると、お互いに60歳以上の世帯は77.1%、少し絞ってお互いに65歳以上の世帯は63.5%、もっと年齢を上げてお互いに70歳以上で介護する人、される人の世帯は35.7%あります。

※参考:2022年(令和4年)国民生活基礎調査の概況【厚生労働省】

 介護をしている間は、夫婦での財産の話や相続準備に対する相談は優先順位が下がります。しかし、介護状態では相続準備がより困難になるだけでなく、遺された家族にも大きな負担がかかる可能性があります。認知症の発症があると判断能力が低下していくので、ますます準備ができなくなります。つまり、それまでにしっかりと計画を立てておくことが重要です。このような背景から、老老介護はもちろんですが老老相続に対する意識と具体的な対策が求められているのです。

老老相続とは?意外と知られていない課題

 「老老相続」とは、相続する状況において高齢者ばかりになることです。親戚の多くが長生きしている状況は理解していても、意外にも多くの人が老老相続のリスクについて十分に理解していない現状があります。

 高齢になった父親が亡くなり相続が発生する頃に、同じく高齢である母親が相続人となります。もし、母親が認知症を発症し判断能力が低下していると、遺産分割協議ができなくなります。その場合は代理人を立てて遺産分割協議をすることになります。少し想像しても、なんだか面倒になりそうだなと思いますよね。

 老老相続の最大の問題は、そのときに認知症になっている可能性が高いということです。

相続のトラブルを防ぐために知っておきたい3つのリスク

 老老相続に対して準備をしないことで生じるリスクは、いくつか存在します。

 まず1つ目は、「認知症発症のリスク」です。認知症を発症すると判断能力が低下しているとして遺産分割協議ができなくなり、代理人を立てることになります。もし、遺産分割協議ができないと不動産は共有名義となり、負動産と呼ばれる状態になりかねません。相続人が認知症を発症している場合は、トラブルの種が残されている状態です。できる準備はしたいところですね。

 2つ目のリスクは、空き家の問題です。親が高齢になると子ども世代も住宅を所有していることがあり、実家が空き家となるケースが散見されます。資産価値があるかどうか、売却できるかどうかが気になるところです。もし売却できるような立地だとしても、先ほども触れたように認知症の親が共有名義人になっていると売却契約ができない可能性があります。

 3つ目は代襲相続の心配です。高齢となった親(被相続人)の相続が発生すると、引き継ぐ側の親族(相続人)も高齢である可能性が高いです。相続人が存命で、認知症ではないという状況でしたら、それほど問題ありません。もし、相続人が亡くなっていたら、その子が相続人となります。権利を受け継ぐようになり、これを代襲相続といいます。関係者が増えると話し合いがスムーズにいかない可能性も高くなると思います。まあ、人によるところはありますけどね。

 この3つのリスクは、事前に準備することで解決できるようになります。準備しておかないとトラブルにつながることもあります。

安心のための解決策

 老老相続のリスクを回避するための効果的な解決策として、2つの方法をお伝えしたいと思います。それは、遺言書と家族信託です。それでは、ひとつづつ紹介します。

遺言書の作成

 まず挙げられるのが遺言書です。遺言書があることで、財産の分配に関する意思を明確に示すことができ、高齢者の夫婦にとって重要なツールとなります。エンディングノートだけでは不十分です。なにも効力はありません。遺言書と比較するとメモ書きというレベルです。

 遺言書は公正証書化することをお勧めします。自筆でも遺言書を作成できますが、やはり公証役場で作成する方が間違いないと思います。

家族信託

 家族信託は、認知症リスク対策として有効です。 家族信託を活用することで、財産の管理権を信頼できる家族に託すことができ、預金や不動産の管理を高齢の親の代わりにできます。銀行で専用口座(信託口口座)を開設し、高齢で認知症を発症した親の代わりに資金を移動することができますし、自宅不動産を売却することもできるようになります。

 介護費用を支払うために親の資金を使用する、不足するようであれば不動産の売却資金を活用するケースには有効な手段です。

高齢となった親の老老相続の心配は認知症のリスク対策と同じ意味を持ちます。

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相続準備は今から!今すぐ始めるためのステップ

 老老相続の準備は、元気なうちに始めることが大切です。 特に高齢者同士の相続の場合、健康状態の急変や介護の必要性が急に訪れる可能性があるため、早めの対策が求められます。

 まずは自分の財産や資産状況を整理し、どのように分配したいかを話すことが大切です。最初の段階では、エンディングノートを活用することも良いと思います。資産状況(銀行、証券、不動産など)の項目を埋めていくことで整理できます。エンディングノートは法的な効力はありませんが、家族との話し合いのツールとしては優秀です。

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 その上で、専門家に相談することを強くお勧めします。ファイナンシャルプランナーや弁護士、司法書士などの専門家は、適切な相続対策の良い相談パートナーになります。遺言書作成や家族信託の組成など、具体的な行動に移すためのアドバイスを受けることで、安心して老老相続に備えることができるでしょう。

まとめ

 高齢化社会により増加している「老老相続」いかがでしたでしょうか。

 家族の資産を守るためには、相続準備を後回しにせず、今すぐにでも行動を起こすことが重要です。老老相続におけるリスクは、何もしなければ避けられないものですが、早めの対策をすることで安心して老後を過ごすことができます。

 遺言書や家族遺産などを活用し、老老相続のリスク対策をすると、家族間でのトラブルを回避することができます。ぜひ、この機会に一歩を踏み出し、大切な家族を守るための対策を始めてください。専門家のサポートを受けながら、今すぐに準備を始めることが、未来の安心につながります

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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