お年玉の心理学 プレゼント効果と金銭教育

お年玉の心理学 プレゼント効果と金銭教育
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 もうすぐお正月ですね。お正月といえば、おせち料理にお年玉のイメージがあります。私の家族では、おせち料理は相当に簡素化されていますが、お年玉は健在です。

 そんなお年玉について話をしてみたいと思います。

お年玉は「餅」だった

 昔のお年玉は現金でなかったというのは、そこそこ有名な話。お年玉の由来として有力な説は、年末年始に五穀豊穣を祈り祀った「歳神さま」によるものとされています。

 お供えした鏡餅(丸餅)を歳神さまが帰られるときに、「お下がり」として家族に分け与えて、健康と豊作を祈るということです。歳神さまからいただく玉の餅ということでお年玉と言われるという説など、諸説あります。

 当時は貴重だった餅を分けていたのが、今は現金です。どのご家庭でも餅つきをすることはなくなっていますし、「まあ、現金の方がいいよね」となるのもうなづけます。

 すっかり日本の文化となっているお年玉は、単にお金を手に入れる以上の心理的価値を持ち、子どもの成長や人間関係に大きな影響を与えます。

お年玉が子どもに与える心理的な影響は?

 お年玉は子どもにとって特別なものです。普段のお小遣いとは別でもらいますし、金額も大きくなることが多くなります。いつもと違うお年玉は、最大の臨時収入となります。渡す方の私たちがもっと特別感を出してもいいのかもしれません。

 そのものの価値以上に心理的な影響を受けることを「プレゼント効果」といいます。

プレゼント効果とは?

 プレゼント効果とは、贈り物や特別なシチュエーションに対して、実際の価値以上に感情的な価値や特別感を増加させて感じることです。それではお年玉の場面ではどのようなことが起こるのでしょうか。

非日常性
 お年玉は日常的にもらうお小遣いとは異なり、年に一度だけの特別な贈り物です。この非日常性が、お金自体の価値を心理的に高めることになり、子どもにとって特別感が生じます。

贈り物の意味
 家族や親せきからもらうお年玉は、自分のことを考えてくれているというメッセージが込められていることを感じます。そのことで、金額以上の価値を感じることになります。

どのような影響があるか

子どもへの影響は
 お年玉を受け取った子どもは「何か特別なことに使おう」という意識が働きます。「特別なお金だから、慎重に考えて使おう」ということもあります。これは普段のお金とお年玉が心理的に区別されていることを意味します。このような影響もプレゼント効果と言えます。

親はどう声掛けするか
 親がどう声掛けするかの影響も考えられます。「お年玉はあなたが自由に使えるお金だよ」という場合と、「お年玉をどう使おうか一緒に考えよう」という場合で、子どもの受け止めが変わります。贈り物ということを強調して、一緒に考えようと声掛けするとお金を計画的に使う機会として話をすることができます。

プレゼント効果の注意点は?

 プレゼント効果は良い影響ばかり、という訳ではありません。ネガティブに働くこともあります。

 例えば、プレゼント効果が強く出ると、すぐに使い切ることもあります。無計画に使ってしまう可能性もあります。逆に、「使わないようにしよう」という心理的に働くことがあります。慎重すぎて、、、ということも可能性あります。

 子どもの年齢にも関係しますが、親が誘導することは控えて、一緒に考えて自分で決定することができると良いですね。

お年玉をお金の教育のチャンスに変える

 行動経済学の視点を活用すると、お年玉をより効果的に活用するアイデアが見えてきます。 お年玉をどう使うのかのアプローチが重要です。金銭教育を始める最適なタイミングとしましょう。

「使う」「貯める」「増やす」の選択肢を提供する

 お年玉の使い道を、子どもと一緒に考えながら、次のような選択肢を提案することで子どもが主体的に決められる環境を作ります。

使う

 子どもが欲しいものを買います。子どもにとってわかりやすく、満足感を得やすい選択肢となります。ただ使い方には注意が必要で、単純に消費するのは避けるべきと考えます。

 行動経済学をフル活用した魅力的な新年セールに踊らされることなく、こちらが利用することを意識しましょう。「これはアンカリング効果で誘われてるな~」と理解して、しっかり判断するということです。

知らずにハマる罠!アンカリング効果のムダ遣いを減らす方法

貯める

 貯金箱や銀行口座に入れておきます。今年は使わずに、何年か分を貯めておいて大きなものを購入する、経験することにします。これは、中長期的な計画性を育てることになります。貯めることを目的とせず、目標のために貯めるという手段であることを伝えることが良いと思います。

増やす

 少々ハードルは高くなりますが、投資の初歩を学ぶ機会として、親がサポートしながら証券会社で未成年口座を開設し、投資に取り組んでみることもおススメです。さすがに中学生以上になるかもしれませんが、社会の見方が変わる契機になります。「貯める」の次の段階として、未来を見据えるチャンスにできます。

 投資に関しては親も勉強する必要がありますから、子どもと一緒に学ぶ機会を作ることもポイントになります。子どもの方が理解力高めかもしれません。

 これらの選択肢を事前に親が用意し、子どもと一緒に「何をのために使うのか」を考えることが、行動経済学的にも有効な考え方です。

金銭教育の親のサポート

お年玉貯金箱を作る

 実際に貯金箱を創るかどうかは別にして、子どもが管理できるようにします。「使う分」「貯める分」「増やす分」というように仕分けができるようにします。仕分けの基準、配分は子どもに任せて良いと思います。

 何のために使うのか、貯めるのか、増やすのか、という部分は一緒に考えるサポートをしましょう。

目標達成シートを作る

 お年玉をどう使うのかを計画するシートを一緒に作成し、記録してみましょう。「〇〇円でゲームを買う」「〇〇円は貯蓄する」など、具体的にしていきましょう。エクセルで作るような簡単なものでも良いですし、お小遣い帳でも良いと思います。

 成功体験に繋がることになります。計画的にお金を使うという達成感や楽しさを感じられるようになります。私の子どもにもしておけばよかったと思います、、、

まとめ

 お年玉を一時的な消費や楽しみだけに使うのではなく、未来のための「種」になることを伝えられると良いと思います。

 お年玉は子どもにとって特別なお金であり、その心理的影響を考えると贈り物以上の価値を持っています。段階的な決断力やお金の価値観を育む貴重な機会となります。

 お年玉を「お金の教育の場」として活用する方法には、具体的な使い方を子どもと一緒に計画したり、貯蓄や投資の基本を教えたりすることが含まれます。お年玉を贈るだけでなく、お金の使い方を一緒に学び、家族で楽しめる成長の機会に変えてみませんか。

 

 

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

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