知らずにハマる罠!アンカリング効果のムダ遣いを減らす方法

この記事はだいたい 6 分前後で読めます。

 セールや特別割引に惹かれて商品を手に取ることは誰にでもありますが、それが本当に必要なものだったでしょうか?私たちの購買行動には、行動経済学でいうところの「アンカリング効果」という心理的トリックが潜んでいます。この効果に引っかかると、知らず知らずのうちにお金を使いすぎてしまうことがあるのです。この記事では、アンカリング効果の仕組みを解説し、家計を守るための具体的な対策をご紹介します。これを読めば、あなたの無駄遣いが驚くほど減るかもしれません。

アンカリング効果とは

 アンカリング効果とは、心理学におけるヒューリスティックの一種で、最初に提示された情報(アンカー)が認知バイアスとして働き、その後の判断や意思決定に大きな影響を与える現象です。人は複雑な判断を行う際、認知資源を節約するために、最初の情報に過度に依存する傾向があります。この効果は無意識に働き、他の情報を十分に考慮せず、アンカーに引きずられてしまうことが多く、判断の偏りを引き起こします。

 たとえば、商品価格で最初に提示された数字が基準となり、それに基づいて判断してしまうことが多いです。定価と値引き価格のことです。アンカーとなる情報は必ずしも合理的ではありませんが、人は無意識にそれに引きずられやすく、結果として最適な決断ができなくなることがあります。

アンカリング効果の事例を見てみよう

 ここから、事例を見ていこうと思います。ビジネスシーン、日常生活、投資や資産形成の3つの場面で見てみましょう。

ビジネスシーンでのアンカリング効果

使い方

① 初めの提案を強調する

 最初に提示するオファーや条件を強調し、相手側がその情報を基準(アンカー)にするように誘導します。例えば、価格交渉で高めの金額を提示することで、その後の交渉をスムーズにすることができます。

② 選択肢の設定

 複数のオプションを提示し、そのうちの一つをアンカーとして高めに設定します。そうすることで、他の選択肢が相対的に魅力があるように見えるようにできます。価格的、ランク的に3つの選択肢があると真ん中が選ばれることが多いという状態です。

③ フレーミングの利用

 最初に希望する結果に近い条件を示し、相手がその範囲内で考えるように促します。これにより、交渉を有利な方向に導くことが可能です。「買う」「買わない」の二択ではなく、「買うとしたらAとBのどちらがいいですか?」という買う前提の話とすることです。厳密にはアンカリング効果ではありません・・・フレーミング効果です。

注意点

●過度なアンカーは逆効果かも

 あまりにも極端なアンカーを設定すると、相手に不信感を抱かせた李、交渉が決裂する可能性もあります。あくまでも現実的な範囲での設定が必要です。

●相手のアンカーに対抗するには

 相手が強力なアンカーを設定した場合、その影響を軽減するために、別の基準や情報を持ち出すことが有効になるケースがあります。

 アンカリング効果を上手に使えば、交渉を有利に進めることができますが、相手の立場や心理を慎重に考慮することが成功の鍵です。

日常生活でのアンカリング効果

●セール商品

 買い物しようと街まで出かけたら、「通常価格5,000円が今日まで3,000円」と表示されている商品を見たとき、定価の5,000円がアンカーとして作用し、3,000円がお得に感じます。この場合、2,000円もお得!というのが先に来て、実際に3,000円の価値があるのか?他店での価格はどうか?など比較や検討をせずに購入を決めてしまうことがあります。スーパーで買うつもりがなくても、シャウエッセンが安くなっていたらカゴに入れちゃう、みたいな話です。

●レストランでのメニュー価格

 高級なレストランで、一番高い料理やコースの価格設定がアンカーとなり、他の料理が相対的に手ごろに感じます。結果として通常なら高く感じる料理の価格も、リーズナブルに錯覚して注文しやすくなります。

これらの事例は、アンカリング効果により、提示された情報(定価や高価なもの)が判断基準となり、私たちの選択や決断に強い影響を与えることになります。

投資や資産形成でのアンカリング効果

●過去の高値を基準にした投資判断

 ある株式が以前に1株あたり1,000円で取引されていた場合、投資家はこの価格をアンカーとして判断し、現在価格の800円が割安と感じることがあります。しかし、その株価が市場環境や業績によって下落している可能性があるため、過去の高値を基準に判断することは誤りとなることも多いです。

●最初に提示されたリターン率

 投資商品を選択するとき、最初に提示されたリターン率が高いと、それがアンカーとなり、他の投資商品のリターンが相対的に低く感じられ、あまり考えることなく高いリターンの商品を選択してしまうことがあります。ハイリスクハイリターンであることが考えから抜け落ちることがあります。

●他人の投資の成功話

 知人やメディアが「この株で大儲けした」「このやり方で大きな利益を得た」という話がアンカーとなり、自分でも同じように儲かるかもと期待して、その株式、投資法に乗っかるケースです。しかし、他人の成功が再現性がある保証はなく、冷静な分析をしないままリスクを見逃すことがあります。

 これらの事例では、アンカリング効果によって投資家が不適切な基準に基づいて判断を下しやすくなるため、注意が必要です。

アンカリング効果の対策はあるか?

 人は合理的ではないと言われる行動経済学が活用されて、私たち消費者は踊らされている面があります。販売する側は積極的に活用しますから、私たちは「アンカリング効果」を理解して対策する必要があります。

日常生活でのアンカリング効果対策

予算を事前に設定する

 購入する前に、事前に予算を設定し、その範囲内で選ぶようにします。アンカーに影響されないためにも、この予算を守ることが大切です。食材や日用品を購入する際、事前に買い物リストと予算を決め、予定外の高価な商品に引き寄せられないようにします。

価格比較を習慣化する

 購入する前に、最初に目にした価格だけで判断しないようにします。高額な商品を買う前に、いくつかの店舗やオンラインサイトを比較し、本当にお得かどうかを確認する癖をつけます。

必要性を再確認する

 購入する前に、その商品の必要性を再確認し、感情や一時的な欲望に流されないようにします。セールで割引された商品を見たとき、すぐに買わずに「本当に必要か?」を考える時間を持つようにします。これにより、割引価格というアンカーに引きずられず、冷静な判断ができます。

 「明日まで半額」「タイムセール30%引き」など、魅力的なセールはありますが、必要かどうかは分からないけど安いから購入すると、後悔が出てくるかもしれませんね。

購入までの時間を延ばす

 衝動買いを避けるために、購入を決断するまでの時間を意識的に延ばし、最初の印象に流されないようにします。欲しい商品があったら、その場で購入せず、一晩考えてから決断するようにします。翌日になっても必要だと感じたら購入を検討します。

支出を把握する

 毎月の支出を記録し、定期的に見直すことで、自分の消費傾向を把握し、アンカーに引きずられて無駄遣いをしないようにします。家計簿やアプリを使って、日々の支出を記録し、月末に無駄遣いを振り返ります。これにより、次回からは無駄遣いしないよう意識が高まります。

 レシートを保管しておいて、月末にすべて見直して、買わなくても良かった物と金額を確認するだけでも効果はあります。もし、今思えばムダだったかもと感じる1万円分の支出があったとしたら、翌月は1万円少ない予算で買い物をすることで、家計をスリム化できますし、へそくりできるようになります。

 これらの対策を実践することで、アンカリング効果に惑わされず、ムダ遣いを減らし、より効果的に家計を管理することができるようになります。

投資や資産形成での対策

複数の情報源を確認する

 重要な決定を下す前に、複数の情報源やデータを確認し、最初に得た情報(アンカー)だけに依存しないようにします。投資商品の選定時に、異なるアナリストの意見や市場データを参照し、初めて見たリターン率や価格だけで判断しないようにします。

自分の基準を設定する

 自分なりの基準や評価軸をあらかじめ設定し、アンカーに引きずられないようにします。不動産投資の場合には、希望条件や予算を事前に明確にし、それに基づいて判断を行うように心がけます。大きなディスカウントがあったとしても、しっかり検討する必要があります。

 これらの対策を実践することで、アンカリング効果の影響を減らし、より客観的で合理的な決断を下すことが可能になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?アンカリング効果を意識して賢い家計管理をしていきたいものです。

 日常生活において、私たちは無意識のうちにアンカリング効果の影響を受け、不要な出費をしてしまうことがあります。特にセール価格や最初に提示された情報が基準となり、その後の判断に大きな影響を与えることが多いです。

 これを防ぐためには、事前に予算を設定したり、価格比較を習慣化することが重要です。また、購入する前にその必要性を再確認し、感情に流されずに冷静な判断をすることも有効です。

 さらに、支出を記録し、過去の消費傾向を把握することで、無駄遣いのパターンを見つけ、次回からの消費を改善できます。賢い家計管理を行うためには、アンカリング効果に対する意識を高め、冷静な判断を下すことが大切です。

 自分の行動が「アンカリング効果に、はまってる」と理解できれば、大きな失敗や後悔はなくなりそうです。

Wrote this article この記事を書いた人

福田 智司

▶独立系ファイナンシャルプランナーとして、相談業務、セミナー講師などで活動しています。 ▶FBCラジオ ラジタス 第一木曜日 10:50~ 「FPふくちゃんのお金に関するエトセトラ」レギュラー出演中 福井で唯一?のラジオFPです ▶FPでIFAというポジションを活かした相談が得意 節約だけが家計見直しじゃない!を念頭に置いた相談を心掛けています。 ▶法人向けに企業型確定拠出年金の導入サポートを推進しております

TOPへ
モバイルバージョンを終了